Fostexの8トラックマルチレコーダー(MTR)は、コンパクトなので機動性が良く
多くのミュージッシャンの現場録音で使われたのではないだろうか。
今もって愛用されている方もいらっしゃる様で時々メンテのご依頼が来る。
しかし残念ながらこのR8には致命的な欠点がある。
ルールを回すために掛けるベルト駆動プーリーがモーター軸から外れてしまうのだ、
その結果、巻き戻し(Supply側リール)や早送り(TakeUP側リール)が出来なくなる。
TakeUP側のプーリーが外れたらPLAY時の巻き取りが出来なくなるので録音再生が
出来なくなる。
ベルトはアプト式歯が付いたタイミングベルトなので、スリップがなくきわめて強力に
モーターがプーリーを回す。
(画像をクリックすると大きな画像になって、画中の文字が読めるようになります)
もし、リール台側に回転負荷が重くなる原因があると、ベルトはスリップしないので、
モーター軸とプーリーの間でスリップが発生する。
ここでスリップが起こるとモーター軸によってプーリーが弾き飛ばされる。
余談だが、リールモーターからリール台を駆動するのにDCモーターを動力源として
ベルト駆動しているのは、このFostexのMTRとAKAIのGX-77位しかない。GX-77の
リールモーターは非力なので、Fostexと同じくプーリーがモーター軸には差し込まれて
いるがこちらはねじ止め式なのでスリップする事がなく、代わりにモーター回転が
止まってしまう。
モーターが止まった事に気が付かないとモーターが焼けてしまう。
Fostexのモーターは強力で、止まる事がなくプーリーを飛ばすほどだ。
プーリーが飛び易いのには理由があって、プーリーの軸にひび割れが出来ていて
モーター軸への締め付けが弱くなっているせいの様だ。もっとユルユルにはまって
いれば空転してプーリーを飛ばす事もないと思うのだが、ちょうど良い具合に空転しない
強さでモーター軸にはまっている様だ。
余談はこれ位にして、プーリー外れを対策しないと、このR8は再起できない。
修理ご依頼の最も難しいのがこの対策だ。
今回ご紹介するのは、今までやって来た対策の中では最強のプーリ外れ防止策ですが、
外れにくさに応じてもう少し簡易な方法もあります。
プーリーが外れないようになると、R8の動作安定性がグンと高まるので、一挙に
再起の可能性が高まります。
ところがもうひとつ難関があって、R8の操作は着脱式のコントローラーで
PLAY、STOP、REC、FF。RWDなどの基本動作やメモリーPLAYを行うのだが、
着脱式と言うのが災いしてコントローラーが紛失しているというのも多い。
コントローラーがないと録音は一切出来なくなる。再生は緊急用の操作ボタンで
動かす事が出来る。
そこで、録音はしない方のために再生専用プレイヤーに改造しようというアイデアが
出て来る。
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